薔薇十字館

戀。


メルシャン プレゼント・フォー・ユー

唐突ですけれども、好きな人、おられますか?
私には好きな人、ゐます。
私の大好きな、あの人。
あの人は私のことを見てくれません。でも、良いんです。
あの人の横顔を毎日見ることが出來るだけで、それだけで仕合わせなんです。
あの人は何時も決まって、8時49分の電車に乗ってきます。
手には茶色い古ぼけたバックを持って。
あの鞄の中には何が入っているのだろう、という好奇心が、何時の間にか恋心に変わっていました。


え、彼に告白ですか?
そ、そんな、私にはそんなこと出來ません。
あの人には綺麗な恋人がいらっしゃるんです。
次の次の驛で、乘ってこられる栗色で巻き毛のまるで人形のような顔立ちをした
人なのです。私なんて、とても・・・。
でも、私、一昨日の七夕の短冊に書いたんですよ、願い事を。
「あの人と一言で良いから、咄をさせて下さい。」って。
他力本願ですよね、これって。


でも、織り姫樣は私に好機をくれたんです。
彼に見蕩れてぼうっとしている私に彼がぶつかってコンタクトが落ちたんです。
おろおろしていると、あの人が探してくれたんです。
結局コンタクトは見つからなかったのですけど、コンタクトのお詫びに食事に誘われたんです。
だから今から、食事に行ってきます。
白のワンピースに、黒のポーチ。紅いマニキュアで大人っぽくして、行きます。
あの人の好みじゃあないかも知れませんけど、私は此が最高のお洒落だと思ったから。
後、プレゼントも持っていこうと思っているんです。
銀色のキーホルダーと、ワインを。
ワインなんですけど、これ、「プレゼント・フォー・ユー」っていう名前なんですよ。
そのままなんですけどね。ハートと天使なんて、出來過ぎかしら。
でも、良いんです。可愛らしいエチケット、私が気に入ったんですから。
でも彼が嫌いだったら如何しましょう・・・。駄目ですね、綺麗に包装して持っていきます 。


それじゃあ、今から行って来ます。お土産はないですよ?
また何時か、お話ししましょうね。

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